#351日前 恋した「タコ」のつかまえ方

Pocket

タコに恋した女

先日の会議の後、「CSK(地球征服会議)商会」小樽支部に入社したアンとふたりで話をすることができた。中村アンに似ているからアン。浜辺美波に似ているからミナミちゃんと呼ばれているタコ星人とは違う。タコ星人のミナミちゃんの顔はつくりものだが、こちらのアン似は人間のそのままの顔だった。だから尊い。むろん眉毛の太さや睫毛の長さ、瞳の色は微妙に異なるのだが、マスクを着けていてもなんとも素敵だった。

ミニの白ワンピのアンは会議室のイイオの席にきて、椅子に座り、私の2メートル前で長い脚を絡めた。私はその脚に極力視線をおろさないように努めながら凡そ2m先にいるアンに尋ねた。
「君はなぜCSK商会を志望したんだい?」すると、アンは明快に答えた。「タコに恋をしたんです」と。

「タコに恋を?」
「はい。タコ漁師さんがとったぞーって感じで大きなタコを掲げているポスターを居酒屋さんで見た時、恋心に近いキュンとした感情をタコに抱いてしまって。それで悶々とタコを食べながら過ごしていたら、私の友人の知り合いの知り合いの旦那さんがタコだ聞いて、えっ、うそっと思たけど、会ってみたら、本当のタコとはちょっと違うけどタコに近いタコ星人だったんです。その旦那さんというのが佐野さんで、空きがあるならCSKに入れてくださいと私の方からお願いをしたんです」
「君は我々が地球征服をたくらむタコ星人であることを承知しているんだね」
「はい」
「じゃあ、タコ星人の本当の姿を見たことはあるかい」
「はい。以前、サノさん・・・サノ前所長に見せてもらいました」
「えっ。じゃ、サノ前所長と君は」
「いいえ、そういう関係にはなっていません。どんな姿か興味があったので見せてもらっただけです」
「どうだった? タコ星人の姿を見て」
「脚が八本あると思ったら、男性の1本は違うのですね」
「それもサノ前所長が説明してくれたのか」
アンは「はい」と言った。サノ前所長はどんなふうに生殖器のある脚の説明を行ったのだろう、私は妄想した。
「どうでした?」
「本当のタコと同じなんだって思いました」
「他には」
「他にですか・・・他には特にないです」
「その姿を見てどう思いましたか。怖いとか、いやらしいとか」
「怖くはなかったですね。先ほども言いましたけど、私、タコに恋をしてしまったので」

タコに恋した女のとるべき行動

そうか、君はタコに恋をしてしまったのか。

タコに恋をしてしまったら、「心のタコ」だけでは満足できないだろう。当然、本物に会いたくなる。しかし、タコ星人ではないので、普通のタコは向こうからやってこない。なら、どうしたら良いか。それは簡単なことだ。海へ飛び込み泳いでタコに会いに行くか、タコをつかまえに行けばいい。

むろん、勝手に海中のタコをつかまえることはできない。アンが特別にタコの漁獲を許された人物であると仮定して話す。タコは海底の岩穴や砂泥に掘った穴の中に潜り、外敵から身を隠している。タコで有名な明石の「タコ壺」漁は、タコが暗いところを好む性質を利用したものだ。穴の代用として壺に縄を付けて海底に沈め、タコに身を隠す場所を提供し、安心して休んでいるところを引き揚げて漁獲するのである。
一方、ミズダコが獲れる北海道小平町では主に「タコ箱」を使い漁をしている。ミズダコの重さは大きなもので10~20㎏になるから、「壷」ではなく「タコ箱」が有効なのだ。

タコは水深1メートルの浅瀬から200メートル前後まで広く分布している。春と秋は浅いところへ、夏は深いところへと一年を通し移動を繰り返す。漁師はタコの通り道を予測し、絶好の位置へ「タコ箱」を仕掛けるのだ。餌を使わずにタコを獲る手法で、タコが箱の中に入ってくれているのを期待して船上に引き揚げる。

この他、タコ箱を使わないタコ漁もある。タコ箱を使った漁と合わせて紹介する。

恋の相手のつかまえ方いろいろ

タコ箱漁でつかまえる

タコ箱を海中に沈め、2週間に1~2回程度箱を揚げる。物陰を好むタコの習性を利用して行う漁法だ。

いさり樽流し漁でつかまえる

1つの樽に「いさり」と呼ばれる大きな掛け針の仕掛けを付けて投入する。樽は潮の流れに従うが、「いさり」に掛かると樽の動きが止まる。

いさり漁でつかまえる

船が漁場についたら「へさき」(前)と「とも」(後)から漁具を流す。この「いさり漁」から改良されたのが、上記の「いさり樽流し漁」となる。

空釣りはえなわ漁でつかまえる

針を仕掛けた縄を沿岸線に垂直に張り、移動するタコを掛けてとる漁法で、餌は使わない。

「死」すなわち「愛」のデジャブ

「へぇ、こんなにあるんだ。オザワさんはタコのこと詳しいんですね」とアン。
「タコ星人もタコも似たようなものだから。小平町に知り合いのタコ漁師がいるから、今度、タコをつかまえに行こうか」
「行きたいです。私をタコ漁に連れてって♪ください」
「アンちゃんの箱って名前を付けてさ。その中にタコが入ってさ。漁師が船に引き揚げて、ご対面ってなって、会えたらどうしちゃう」
「キスをします」
「唇が生臭くなるぞ」
「いいんです、恋したタコの匂いなんですもの」
「そうか、それからどうする。デートでもする?」
「いいえ」とアンは言った。「食べます。全部食べて、私の体の一部にします」
「そうか、そういう恋のし方もあるな。アンちゃんに食べられるタコなら、タコ冥利に尽きると思うよ」
「そうでしょうか」
「僕なら喜んで食べられちゃうな」
そう言った時、私はデジャブを感じた。以前、こんな会話をアンとしたことがあるような気がした。タコ星人は永遠の命があるはずなのに、「死」へのカウントダウンがもう始まっているようないやないやな感じだった。

タコ星人の「死」とは、すなわち「愛」。
まさか。おれにはレイアというガールフレンドがいるんだぜ。私は困惑した視線をアンの美しい脚に向けていた。

(「タコ箱漁オーナー2019 in おびら」ホームページより一部引用)


シニアライフランキング ブログランキング・にほんブログ村へにほんブログ村